イベント・セミナー

ソーシャルビジネス現場視察会2013 報告レポート        第7回「あっとほーむ」

開催日時
2013年11月16日(土)
開催場所
ほっとカフェ中川、あっとほーむ

ソーシャルビジネス現場視察会2013 報告レポート 第7回「あっとほーむ」

P1000806_spy

学んだポイント:スケールアウト(事業モデルを広げる)

2013年11月16日(土)に、第7回ソーシャルビジネス現場視察会「あっとほーむ」が行われた。あっとほーむは、代表の小栗さんが一般企業で勤務している時、女性が結婚出産後も働き続けることの難しさに気付き、働き続けたい女性をサポートしようと1998年に起業した。残業やシフト勤務時に親の代わりに保育園にお迎えに行き、一軒家で、おうちにいる時と同じように過ごせる夜間保育を行ってきた。視察会では、「お迎え付夜間保育・学童保育事業」「働く女性支援事業」の他に「子育て支援者育成事業」も行っている小栗さんから、事業モデルを広げる「スケールアウト※」について学んだ。

保育や教育に関わる人など11名が参加した本視察会は、あっとほーむ近くのコミュニティカフェ「ほっとカフェ中川」で行われた。ほっとカフェ中川は、「地域の人が集まる中心にコミュニティカフェを作りたい」という想いから作られたカフェで、店は全てボランティアに任されている。ほっとカフェ中川を運営するNPO法人ぐるっと緑道の理事長・塩入さんのお話によると、ここではカフェや地域の情報共有の場というだけでなく、イベントや講座なども行われているそうだ。
CIMG6226 CIMG6234

最初に小栗さんから、あっとほーむが行うスケールアウトについての説明があった。あっとほーむを始めてから10年経ち、今後の展開を考えた時、小栗さんは「跡継ぎを育てる」のではなく、「蕎麦屋の暖簾分け」のようなスタイルを選択した。その理由は、「あっとほーむは自分がやりたい。でも、あっとほーむのような場所がもっとできてほしい。」という気持ちがあったからだ。その後小栗さんは、ソーシャルビジネスの有識者からもらった本で「スケールアウト」という言葉を知り、あっとほーむのような「おうち保育園」を広めるために「子育て支援者育成事業」を始めた。
CIMG6284

スケールアウトには、大きく分けて3つの型がある。一つ目は、支店を増やすなどの「完全所有型」。二つ目は、フランチャイズやライセンス提供、パートナーシップの協定をする「アフィリエーション型」。三つ目は、トレーニングやコンサルティングをする、書籍で情報提供をするなどの「情報提供型」。小栗さんは、この中のアフィリエーション型が、目指す姿に最も近いと感じたそう。なかでも、「人の上に立って儲けたいわけでもなく、試験をして評価したいわけでもなく、価値観を広めたい」と思い、パートナーシップの協定などを行う「蕎麦屋の暖簾分け」のような形式を選択した。
CIMG6275

このようなかたちで始まった「子育て支援者育成事業」は、現在8人が受講している。受講後も、元受講生が集まる場を設け、価値観を共有するためのネットワークづくりを行っている。ただし、受講生につくって欲しいのは「あっとほーむのコピー」ではない。学んだことをもとに、「その地域らしい、その人らしい場所を作って欲しい」と小栗さんは話す。
CIMG6297

 

あっとほーむは保育園や学童のような場所ではなく、「おじいちゃんおばあちゃんの代わり」になることを目指している。今回のコーディネーターである中小起業診断士の為崎さんと小栗さんの対談では、「子ども達が行きたい!!と思える場所を作るためには?」との質問が出た。あっとほーむでは、スタッフは先生ではなく、常に近所のお姉さんお兄さんという立場を保っているという。子どもが安心して通える場所にするためには、スタッフ間の情報共有を大切にする他、採用するスタッフの基準も厳しくしている。例えば、「働いているお母さんはかっこいい」と子ども達に思ってもらうためには、スタッフ達も、働きながら子育てをすることに批判的ではいけない。価値観が似ている、価値観を共有出来る、と感じる人しか、採用しないそうだ。
CIMG6291

 

後半では、実際にあっとほーむを見学させてもらった。住宅街の中にあり、外見は普通の一軒家。中に入ると、壁に子ども達の絵が飾られていて、子育て真っ最中の家庭のようだ。一般家庭と違うのは、たくさんの靴が並ぶ靴箱やマイカップ置き場、ずらりと並んだロッカーがあることだ。子ども達ひとり一人のロッカーやカップを用意することで、あっとほーむが子ども達の「居場所」になるように、工夫しているのだなと感じた。
CIMG6301

 

質疑応答の時間には、参加者からたくさんの質問があがった。「現場を任せるスタッフと価値観を共有し続けるためには」という質問に対し小栗さんは、地味な活動が多いからこそ、スタッフが活動の成果を感じる場を設けることを大切にしていると答えた。また、スタッフ間で相談ができるような環境をつくり、スタッフの不安や不満をスタッフ同士で解決できるような仕組み作りをしているという。

CIMG6313

「現収入の内訳は」という質問には、利用料と補助金を基本としているとの答えだった。あっとほーむのポリシーとぴったり合う申し出があればタイアップするが、少しでも合わないところがあるときは、支援を受けないという。補助金も、もらえる金額や付加価値と事務手続きのバランスが合った時は、もらうようにしているそうだ。「補助金に使われないように」することが、重要だという。
CIMG6238
視察会の間、「わたし、わがままなんです」と何度も話していた小栗さん。しかし、小栗さんの「わががま(=こだわり)」のおかげで、このあっとほーむは居心地の良い場所になったのだと、わたしは感じた。「わがまま」は信念が強いということでもあり、自分の主張を貫くことができるということでもある。「自分だったらこんな場所が欲しい」という感覚を忘れず、親子がお互いにとって快適と感じる場を作ることで、たくさんの利用者がいる施設になったのだろう。この場所で育ち、あっとほーむを第2の我が家とすることができた子ども達は、幸せだろうなと感じた。

 

 

(2013年11月 レポート 学生インターン加藤)

 

※スケールアウト:ソーシャルビジネスの社会的インパクトを高め、広域で量的ニーズにも応える体制をつくるために、ビジネスモデルを水平展開させること。