特集・インタビュー

横浜ソーシャルビジネス支援組織インタビュー vol.2《NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ 理事 宮島真希子さん》


横浜市内には、ソーシャルビジネスの支援組織が多様にあります。支援組織をご紹介するシリーズ第2回は、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ(中区相生町3)の宮島真希子さんに関内桜通りのオフィスでお話を伺いました。(聞き手:株式会社イータウン 代表取締役 斉藤保)

 

斉藤:まず事業内容を紹介していただけますか?

 

宮島:わたしたちの事業にはメディアを作ることとリアルな場を作ることの2本の柱があります。これは基本的に初めから変わっていません。ヨコハマ経済新聞、港北経済新聞にくわえ、2014年にLOCAL GOOD YOKOHAMA(ローカルグッドヨコハマ、以下ローカルグッド)が立ち上がりました。この独自メディアを軸に、行政や企業から委託されたウェブサイト運営事業、イベント企画・運営などがあります。オンラインとオフライン、この両輪で人をつなぎ、それをきっかけにいろいろな活動をしてほしいと考えています。当初より変わった点としては、リアルな場として拠点を持てたことです。安定的に人が集まれる場所が得られた価値は大きく、シェアオフィス<さくらWORKS<関内>が動いていることで、事業収入はもちろん、人のつながりも得られ、できることがひろがりましたね。

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斉藤:新たに始められた地域の課題解決プラットフォーム、「ローカルグッドヨコハマ」立ち上げのきっかけはどのようなことでしたか?

 

宮島:東日本大震災後、クラウドファンディングが存在感を高め始めていた頃に、東北地方で地域型支援事業を展開していたアクセンチュア株式会社(東京都)のCSR部門である「コーポレート・シチズンシップ」担当者を招いて勉強会をしたことがきっかけです。その後も情報交換を兼ねた勉強会を重ねる中で、東北地方に限らず「横浜でもクラウドファンディングが展開できれば」という話になりました。アクセンチュアにはシステム構築、プロジェクトマネジメントについて予算と手厚いプロボノ支援の両面でサポートしていただいています。2014年6月にローカルグッドを立ち上げました。

 

斉藤:クラウドファンディングを展開するにあたって、課題をきちんと可視化するということと、継続的な支援をすることが重要ですね。そうした中で関心層を掘り起こすことが大切だと思いますが。

 

宮島:実は寄付できる会員数はこの1年で550人。横浜市の人口370万人から考えるとまだまだです。7つのプロジェクトは全国紙やNHKなどに全て取り上げられてきましたが、認知度と会員増とはまた別のことです。関心層の掘り起こし方としては案件を持っている人の現場で人が集える機会を作り、地道に地域の人たちに知ってもらうイベント「ローカルグッドカフェ」を実施しています。実際のところクラウドファンディングそのものの認知度はローカルに行けば行くほどまだまだ低いですから。

 

地元を軸としたクラウドファンディング

 

斉藤:クラウドファンディングのあり方として、例えば「横浜から全国へ!ダブルケア(育児と介護の同時進行)サポート横浜プロジェクト」のような案件は、全国に共通する課題でもありノウハウも広めていける可能性がありながらも、やはり狭いエリアでのキャッシュのやり取りが存在することも現実ですよね。そういった状況があるなかで、クラウドファンディング自体の普及は社会的な課題でもありますね。

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宮島:例えば、ローカルグッドに限らず、横浜市内でクラウドファンディングに挑戦している人の話題を取り上げていくのも面白いと考えています。身近にそういうプレーヤーがいると知ることによって、クラウドファンディングの認知度につながるかもしれません。

 

斉藤:この事業に取り組むにあたって、横浜市大との共同研究事業としてスペインのクラウドファンディングの課題解決の仕組みを研究するというテーマで、スペインから開発者を招いてワークショップされたそうですが、どんな内容のワークショップだったのですか?

 

宮島:クラウドファンディングをやりたい人が自分の案件を持って集まってピッチ(ショートプレゼンテーション)をする。「どんなプロジェクトだったらお金をだすか?」「自分を取り囲むコミュニティーはどんなものなのか?」「この案件を実現することによって、社会にはどんな利益があるのか」などを参加者に考えてもらい、実際におもちゃのコインを寄付します。プロジェクト野立て方、社会に還元する価値を深掘りするワークショップです。

 

斉藤:確かに、起業家や新事業に取り組むとき、当初はビジネスベースで事業プランを構築していながらも、ブラッシュアップの段階で、社会性や公益性について意識が高まっていくケースもあるのでしょうね。

 

宮島:そうですね。最初は自分のNPOの活動目的のための利用がスタートだったりもします。でもその結果で何を社会に還元できるのかを考えてもらう。寄付しなかった人にも還元できる「公共リターン」を考えることが大切なんです。「横浜から全国へ!ダブルケア(育児と介護の同時進行)サポート横浜プロジェクト」は、最初はカフェ(居場所)を作りたいという考えでしたが、「まずは同じケアラー同士を支え合う仕組みや学びの場をつくることが最初なのでは」というふうに、変化していきました。

 

斉藤:ダブルケアなどの課題は、専門家に任せるだけでなく、このケースのように市民専門性を高めることによって、縦軸に横軸が加わり、地域に軸ができるというか深みのある関係性を構築できてきますよね。

 

宮島:生活者ならではの知恵は重要です。当事者だからわかる口コミ情報などもありますしね。

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斉藤: 進行中のプロジェクトの報告会などの予定はありますか?

 

宮島:「青葉区発横浜おみやげプロジェクト」は地元の米粉を使ったお菓子を作ったのですが、それが完成して7月4日にお披露目を行いました。この事業は起業を目指す10人くらいのチームでやっていたのですが、最初は伸び悩んでいました。ある時、神奈川新聞に取り上げられまして、その記事を読んで20万円送ってきてくれたおばあちゃんがいたそうです。「クラウド何とかはできないから現金書留でいいか」と電話が来て、メンバーは、半信半疑だったそうです。けれども、現金書留の封筒が届き、プロジェクトリーダーがすぐにお礼に行きました。メンバーは自分たちのやっていることが評価されたことがわかり、とても感激していましたし、さらにいい「チーム」になっていきました。

 

 

斉藤:わたしが震災後ずっと支援に関わっている岩手県大槌町でもそうした地元の生産品を使ったプロジェクトはぜひやってみたいですね。被災地でも若い人たちが動き出しています。新しいアイデアも出始めているのですが、なかなか進まず難しい問題も多い状態です。

 

宮島:確かにそうですね。クラウドファンディングだけでなく、伝えるメディア機能もあるローカルグッドのプラットホームが被災地にあるといいですね。

 ローカルグッドとコミュニティカフェ

 

斉藤:たとえば大槌などでは中間支援的な人、伴走者になって町民と役場と企業を取り持つ役割の人が必要だと思います。もともとの地元の生活の時間の流れと外からのうねりとのひずみが出ている。人が育っていかない、必要なところにお金が流れていかないとか。補助金が減っていく中での現実的な課題です。

 

斉藤:宮島さんの中でこれまで関わったプロジェクトの中で手ごたえがあった、やりがいがあったものは何ですか?

 

宮島:どれもみんな印象的ですね。プロジェクトのオーナーになる人は皆さん自分の言葉を持っているし課題も見えている。もっともっと取り上げたい人や状況があります。最初に100万円を超えた「有給職業体験プログラムバイターン実施プロジェクト」は、当初は出足が遅くて「無理なのかもしれない」と心配していましたが、地域の人や学校の先生、生協関係のワーカーズコレクティブの人たちのサポートが厚く、それぞれが繋がって関係が深まってゴールに到達したという感じでした。

 

斉藤:プロジェクト進行の経過を追えるのも中長期的にかかわるメリットですね。

 

宮島:地域にいるというのは、いいことも悪いことからも逃げられないので、深く付き合うことになり、いろいろなことを知ることができます。一緒になってやっているというありがたい経験をさせていただけますね。

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斉藤:今後の課題としてはクラウドファンディングの認知度向上や事業として続けるコストなどということがあるようですね。

 

宮島:クラウドファンディングというこの直接的な金融は行政がやるべきなのか民間がやるべきなのか、役割分担の過渡期のように感じています。テクノロジーが可能にしてくれた部分もある一方、まだまだローカルに行けばいくほど封筒に現金を入れてくる人がいるのが現実ですから。もしかするとイータウンさんのようなコミュニティカフェがつなぎ手になるという可能性もあるかもしれません。オフラインで持ってきた現金をオンラインにするというような。ローカルグッドカフェも行政の施設でなく、コミュニティカフェで実施するほうが、盛り上がるのですよ。ぜひ一度ご一緒したいですね。

 

斉藤:コミュニティカフェでローカルグッドカフェをやる利点はどんなことがありますか?

 

宮島:ローカルグッドカフェを開催すると毎回20~30人は集まります。地域に根差したコミュニティカフェでおこなえば相乗効果が期待できると思います。プロジェクトのその後の見守りや、人を紹介してもらうことなどもできると思いますし、参加した人へのお土産を地域の作家さんの手作り品などにするのもとてもいいですよね。クラウドファンディングをやっている人とコミュニティカフェは相性がいいと思います。

 

斉藤:コミュニティカフェでのローカルグッドカフェ展開は興味深いお考えですね。まちの課題解決を支援するローカルグッドとまちの人が集まるコミュニティカフェ。コミュニティカフェのまちづくり拠点としての価値も活かせそうです。今後、地域の課題案件を持つプロジェクトリーダーさんとローカルグッドが上手くつながり、多くのひと達の「自分たちごと」になっていくといいですね。ありがとうございました。

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NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ

横浜コミュニティデザイン・ラボは、世界の港町「横浜」を目指し、面白く、楽しいまちづくりを実践型で研究する非営利のラボ(研究機関)。

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K2インターナショナルグループ「なりゆき祭」 日時:8月21日(金)・22日(土)・23日(日)

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