特集・インタビュー

ソーシャルビジネス支援組織インタビュー vol.4《男女共同参画センター横浜(フォーラム)吉武恵美子さん、和田とも子さん》


横浜市内のソーシャルビジネス支援組織をご紹介するシリーズ第4回は、あらゆる分野での女性の参画からヘルスケア等の生活支援まで幅広くサポートしている男女共同参画センター横浜(フォーラム)事業課の吉武恵美子さん、和田とも子さんに女性の起業支援事業についてお話を伺いました。(聞き手:株式会社イータウン 代表取締役 斉藤保)

 

斉藤:市民社会の活動と交流の拠点づくりを目的に発足した男女共同参画センターは、フォーラム、フォーラム南太田、アートフォーラムあざみ野の3館を拠点に、幅広く女性支援事業を展開されています。現在フォーラムで行っている起業家セミナーやソーシャルビジネス支援事業の概要を説明していただけますか?

 

吉武:起業支援の取り組みは、「女性起業UPルーム」を中心に、昨年、一昨年と2回行った「女性のための社会起業スクール」があります。

「女性起業UPルーム」は2007年に開設、来年10周年となります。横浜で起業を目指す女性の支援拠点として、特にITを最大限活用して起業するための支援をしています。

女性の経済的自立が事業所や会社に就職して働く、あるいは子育てしながら再就職する、という選択肢がいまだ主流のなか、自分で店を持つなど「事業を始める」ことも選択肢のひとつとして考えられるよう支援することが目的です。講座、セミナー等すべて女性対象です。

斉藤:以前講師をさせていただいたことがありましたが、受講者全員が女性という講座はほかで経験がなく、しかも皆さん前向きで熱心なので非常に圧倒された印象をうけました。「女性起業UPルーム」のプログラムを教えてください。

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吉武:ラインナップとしては起業準備相談・HP診断、セミナー、女性起業家たまご塾、そして起業後のネットワーク作り、女性のためのトータル支援の5つです。

女性起業家たまご塾は、1期25名の募集で前期5日間(事業計画作成)、後期5日間(ITの活用スキルアップ)で隔週土曜日の集中講座です。業種は絞っていないので様々な業種の人が集まり、メンバー同士が切磋琢磨して自分のビジネスプランを完成させていきます。起業後も継続的に支え合える女性起業家のネットワーク作りやトータルな支援として、男女共同参画センターならではの起業周辺のサポート、たとえば子育てや介護の負担も多いなかでの健康支援などについての相談も行っています。

 

斉藤:それは心強いですね。横浜市経済局などでも起業創業や中小企業支援を行っています。たとえば開業後の財務や労務の相談などの対応はされているのでしょうか?

 

吉武:フォーラムは主に起業段階までのサポートです。財務等専門家の助言が必要な場面や、事業のステージアップのための経営者のメンター支援事業などに関しては、横浜市中小企業支援センターIDECやF-SUS(女性専用スタートアップオフィス)などをご紹介しています。横浜市はステージに応じて利用できるサービスが充実しており、これは利用者さんからも評価いただいている点です。

 

斉藤:もうひとつの起業支援「女性のための社会起業スクール」について教えていただけますか?

 

和田:昨年(2015年度)の「女性のための社会起業スクール」は、障害や病気などを持つ当事者やその家族や支援者を対象に、違いを知って認め合うことからつくられる仲間のつながりを活かして課題解決を目指しました。参加者は自分の課題を持ち寄り、それを仲間に話すことで課題の共通点に気がついたり、ひとつの課題の解決策が他の課題にも使えることに気づき、エンパワーされたようです。保育はもちろん手話通訳付きの講座にしたので、聴覚障害やその他の障害、病気といった社会にハンディを負わされた当事者など、課題意識の明確な参加者が多かったです。可視化できるホワイトボードミーティングの手法も効果的でした。

聴覚障害を持つ方からは、聞こえる人と対等に意見し合い仲間になることで多くのことが学べたと言われ、逆に障害のない人からは真剣に当事者の声を聞き、こんなに知らないことがあったんだ、と講師も含めみんなが一緒になってプランを練りました。社会起業、人を巻き込むこと自体の学びも実体験されたようです。

 

斉藤:スクールでは様々な事業プランがでたと思いますが、その中でも特に学び合いの成果がでたプランをいくつか教えていただけますか?

 

和田:障害の中でも人数が少なくネットワークが作りにくい視覚障害児のための「視覚障害児の育ちと学びサポート」、発達障害児の高校卒業後の進路の問題に取り組む就労場所としての「米粉ベーカリーぴぐまりおん」、障害のある人もない人も共に学べる「学びあいのコミュニティWomen College」などがでました。

 

斉藤:プランの詳細を教えていただけますか?

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和田:「学びあいのコミュニティWomen College」は、自治体等で開催される育児やキャリア等の女性向け講座に手話通訳かテキスト訳を付けた情報保障を整備し、聴覚障害のある女性も受講しやすい環境を作ることと併せて、交流の場も併設して市民同士の相互理解を深める場を提供するというプランです。将来的には、民間のオンライン業者や大学等と連携してオンラインで動画配信し、育児中の母親や就労中の女性、遠方に住む女性も受講できる環境を作りたいとのことです。聴覚障害の当事者でもある長野留美子さんは聞こえない人の子育てや職場での仕事の仕方を支援しているのですが、手話通訳のついている今回の講座を受講したことで、聴覚障害のある女性支援の講座への応用を考案しました。

 

斉藤:自らが抱える課題をスタートにしながら自治体との連携という地点までプランにしている、素晴らしいですね。社会起業は、課題を解決するための事業です。単に売れる商材を作るという一般事業とは異なります。お伺いしていると、専門家やメンターの方々にアドバイスもらい、支え合う仕組みができているのがこの講座の特徴なのですね。

一方で起業支援事業を行うなかで感じている課題はありますか?

 

和田: 「女性のための社会起業スクール」は2回で終了したのですが、フォーラムとして今後も起業を目指す女性が安心して話せる「場」作りは必要だと感じました。「仲間」だと思える人たちがいて、本気で話し合って、はじめて次のステップが見えてくる。お互いの顔が見える「場」の大切さを感じました。ある種コミュニティカフェもそういう場所になってきているかもしれませんね。

 

斉藤:そうですね。コミュニティカフェが今後中間支援としてそうした部分をどのように担ってけるかは、私達が運営している、港南台タウンカフェや、昨年度から立ち上がった、横浜コミュニティカフェネットワークでも取り組んでいます。ありながらも、地域で果たす居場所の役割、つながりの役割などとても高い課題解決の可能性をもっていると思っています。

 

和田:社会起業スクールを通して感じたのは、情報が流通していないということです。例えば障害などの対処は個々に蓄積はあるのに、それぞれが解決した問題の蓄積が情報として整備、流通されない。障害を持つ人を取り巻く問題はすごくみんな似通っているところがあり、ひとつ解決できたらほかの障害のケースにも使えるのでは、と感じます。

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斉藤:フォーラムはこれまでの起業UPルーム10年の蓄積とキーパーソンの方々との関係がしっかりある、と感じています。社会起業スクールはそんな中で取組まれた次のステージとも考えられますね。

一連の講座受講は起業のきっかけにはなりますが、その先、その経験をどう活かしていくか、当事者同士、受講者同士が会を作るなど交流を持つことも大切かもしれませんね。横浜には意識を持って取り組む人や、経験を持ったコーディネーターがいますので、講座をきっかけに継続的につながれるといいですね。そう言った部分は支援機関としてコミュニティカフェを運営している我々も意識して関わっていきたいところです。

 

斉藤:最後に、起業を検討している女性へのメッセージをお願いします。

 

和田:ひとりじゃないよ、ということをお伝えしたいですね。私たちも含め、「仲間」ができることで一歩を踏み出すきっかけや発想の広がりにつながります。一人で抱えていた課題を解決することも可能です。

 

吉武:起業するかどうか以前の、これからどんな働き方をしようか、起業の可能性を知りたいという相談から気軽に足を運んで欲しいですね。保育もありますし、公的な機関ですので安心してご利用いただけます。女性が背負いがちな課題を含めアドバイスできる専門のナビゲーターもいます。話しているうちに、見過ごしていた自分のスキルや強みに気付いて帰っていかれる方もあります。ライフステージ等の条件で必ずしも起業がベストな選択肢ではない場合もありますので、かっちりとした事業プランを固める前に相談に来ていただきたいですね。

 

斉藤:フォーラムは事業支援だけでなく、相談者の心と身体のことから生活全般もサポート、そこから起業へとつなぐ懐の深さがあります。まずは気軽に相談してみて欲しいですね。フォーラムの様々な機能を多くの女性に活かしていただけるといいですね。どうもありがとうございました。

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公益財団法人 横浜市男女共同参画推進協会 男女共同参画センター横浜(フォーラム)

前身である財団法人横浜市女性協会として昭和62年の設立以来、すべての人が生きる権利を尊重され、あらゆる分野に男女ともに参画できるよう行政・企業・学校・NPO等と連携しながら、女性の活躍推進、男女共同参画事業を展開している市民利用施設。

連絡先電話番号:045-862-5050(代表番号)

ホームページ
http://www.women.city.yokohama.jp/find-from-c/c-yokohama/

女性起業UPルーム
http://www.uproom.info/

社会起業支援
http://www.uproom.info/social/