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横浜ソーシャルビジネス事業者レポート ≪NPO法人ドリームエナジープロジェクト 内海智子さん≫

ドリームエナジープロジェクト 内海さん写真


「八日目」という映画がある。主演の俳優二人がカンヌ映画祭の最優秀男優賞を受賞した作品だが、そのうちの一人はダウン症の青年だった。NPO法人ドリームエナジープロジェクト(以下「ドリプロ」)を主宰する内海さんは、この映画に大きな衝撃を受けた。当時内海さんは長男隼吾さんが、医師からダウン症という診断を受けて以来、我が子に障がいがあることをなかなか受け入れることができなかったのだが、そんななか出会ったのがこの映画。隼吾さんが2歳の時のことだった。希望の光に見えた。

ドリームエナジープロジェクトの立ち上げ

隼吾さんの発達にプラスになればと楽しい刺激を様々体験させるうち、内海さんは隼吾さんが歌やダンスに関心を示すことに気づく。日々アンテナを張り巡らせていると、新聞で「ホットジェネレーション」というミュージカルスクールで障がい児が主役となる舞台があることを見つけた。思い切って東京にあるスクールに通い始めた。我が子が練習を積み、人前で表現し拍手を受け、自信と達成感を得ていく様子に感動。主催者にかけあい「ホットジェネレーション」神奈川校を立ち上げた。その後、隼吾さんは、山田火砂子監督の映画「筆子・その愛~天使のピアノ~」の障がい児オーディションに応募し、合格。 女優の常盤貴子さんと共演、セリフをもらって出演した。それを機に日本で初めての知的障がい児のプロダクション設立に参画した。そこで企画、運営に3年間関わったが、その後、方向性の違いから袂を分かち、2013年に、ダウン症や自閉症など知的障がいのある子ども達が輝ける場をつくりたいと新たにドリプロを立ちあげた。

ドリームエナジープロジェクト レッスン風景

社会性をもったNPOであること

内海さんは、隼吾さんを駅前のピアノ教室に通わせようとして、やんわり断られた経験を持つ。障がいのある子の可能性を伸ばすために、ドリプロスクールは、単科ではなく複数の科目を体験できるカルチャースクール方式としている。ドリプロ発足時の体験レッスンには、それまでのつながりから口コミで100名近くが参加したという。現在は「コミュニケーション」「ダンス」「歌」「表現」「写真」など12のプログラムが用意されており、障がいのある子の可能性を信じる、専門性の高い講師が指導にあたる。

そんな講師との出会いや、会場として使用しているJXエネルギー(株)の体育館を借りられた経緯など、内海さんの活動は、様々な人や機会に恵まれている。それは、強い想いに従って常にアンテナを張り巡らせ行動する内海さんの懸命な姿、そして実現したいことのイメージが明確であることの結果だ。団体の法人化を考えるタイミングで、内海さんは横浜市のソーシャルビジネススタートアップ講座を受講した。講座は自分たちの活動内容を客観的に見つめる機会となり、障がいのある子のためという内向きになりがちなスクール事業だが、社会的意義やソーシャルビジネスという観点の、社会性をもったNPOとなる意識が持てたという。

 

ドリームエナジープロジェクト 書道
写真提供 ドリームエナジープロジェクト

障がいのある子どもが街に生きていることを根づかせたい

「ぷれジョブ」という活動をご存知だろうか。「ぷれジョブ」は、障がいのある中高校生が半年間、週1回1時間、サポーターと共にお店や会社で仕事体験をするプログラムで、現在のドリプロ活動の柱のひとつとなっている。倉敷で生まれたこのプログラムは、いま全国に広がり、4年前、慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスで教鞭をとっていた元宮城県知事の浅野史郎氏と内海さんは「ぷれジョブ 藤沢」を立ち上げた。内海さんは浅野氏と商工会議所を訪ね、まず「女性社長の会」会長の会社で受け入れてもらう。障がいのある子が街に生きていることを知ってもらうということが趣旨のぷれジョブだが、社会での仕事体験は、半年間で子どもの成長を引き出し、また受け入れ事業所にとっても、障がいのある子の一生懸命さから得る刺激が従業員にもプラスになった。そうした成果から、他社へも紹介されるようになって、受入れ企業を増やしてきた。

一歩先に進めば世界が広がる。障がいがあるからできないと決めつけたり、可能性を親が決めてしまうのでなく、チャレンジの機会をつくりたい、ドリプロに込めた内海さんの想いだ。

 

ドリームエナジープロジェクト レッスン風景
写真提供 ドリームエナジープロジェクト

一人一人の個性の輝きに出会って欲しい

今の日本では、知的障がいのある人と接する機会が少ないため、自分とは関係ない、わからない、と思っている人が多いのではないだろうか。「知的障がい、というどんよりとしたマイナスイメージを変えたい」ドリプロでは障がいのある人とプロが共演するステージイベント「インクルージョンライブ」を過去4回開催してきた。発表の場であり、障がい者も家族も一般の人もいっしょに楽しめるイベントだ。

2016年3月、磯子にある区杉田劇場で開催した舞台「21番目の素敵な出逢い」には、女優の常盤貴子さんが「障がいのある人の笑顔と輝く姿に出逢える」という趣旨に賛同し、サプライズゲストとして出演してくれた。当日のアンケートには、「生きている意味を感じた」「障がいのある子の表現が素晴らしかった」などの声が多数寄せられた。常盤さんからの希望もあり、来年7月に再演の計画を立てている。内海さんは、ぜひ一人ひとりの個性の輝きに出会って欲しい、そして障がいへの理解を深め、お互いに優しくなれる共生の社会をめざしたいと、と夢を膨らませている。

 

ドリームエナジープロジェクト 舞台写真
写真提供 ドリームエナジープロジェクト

組織概要

NPO法人ドリームエナジープロジェクト
http://www.dre-pro.net/

知的・発達障がいのある子どもの社会参加を支援し、障がいについて理解を深める啓発活動を進めている。障がいのあるなしを超えて、ともに暮らせるインクルージョンな世の中をめざして活動している。
ドリプロスクールの練習会場として、JXエネルギー株式会社根岸製油所の体育館を借りている。

取材:2016年9月